あなたはワインの話をしていて「旧世界」「新世界」という言葉を聞いたことはありませんか?
耳にしたことはあっても、その意味となるとはっきりしないのではないでしょうか。
ワインで使われる「旧世界」と「新世界」という言葉の疑問を解消していきましょう。
違いはワイン生産を始めた時期
まず「旧世界」「新世界」をざっくり説明しますと、世界中に広がるワインの生産地域をワイン作りが始まった時期によって分けたものです。
ワイン作りは元々、現在のジョージアあたりの東ヨーロッパ・西アジア地域で、紀元前6000年頃に始まったといわれ、その後西にエリアを広げヨーロッパ各地に伝わりました。それから長らく、ワイン作りはヨーロッパを中心として続けられていたのですが、15世紀頃になって世界各地に広められていきます。
そこで、古くからワイン作りがされているヨーロッパ各地のワイン産地のことを「旧世界」、新たにワイン作りが広まった産地を「新世界」と呼ぶようになったのです。別の言い方をすれば「ヨーロッパの伝統産地」と「非ヨーロッパの新興産地」とも表現できるでしょう。
ただし、ヨーロッパの産地がすべて旧世界と呼べるわけではありません。ヨーロッパにも近代になってワイン作りを始めた産地があり、また古くからワイン作りは行われていたのだが技術が途絶え、新技術を導入してワイン作りを再開した地域もあるからです。
ということで、それぞれの代表的なワイン生産国を挙げておきます。
旧世界
・フランス ・イタリア ・ドイツ ・スペイン ・ギリシア ・ハンガリー ・オーストリア など |
新世界
・オーストラリア ・ニュージーランド ・チリ ・アルゼンチン ・アメリカ ・南アフリカ ・カナダ ・日本 など |
旧世界と新世界、ワインの傾向の違いは?
ワイン醸造が始まった時期によって分けられる2つの世界ですが、伝統が少なからず味わいにも影響を与えているようです。
それぞれの特徴を、説明してまいります。
旧世界
ヨーロッパ内で近接している生産地であるものの、それぞれに交流がほとんどない状態で長年ワイン作りをしてきたため、地域による特徴がまちまちでひとくくりにはしづらいところがあります。
例を挙げると、フランス一国で作られているワインのバリエーションは、新世界のすべての生産国で作られているバリエーションよりも多いといえるくらいです。つまり、各土地で独自性があるワインを作っているのが旧世界の特徴といえるでしょう。
ですから、旧世界の生産地ではワインの味は土地の個性を表しているという考えがあります。長年かけて醸成されていった、その土地だからこそ作り出せたものがワインだというのです。
これらを前提として、旧世界のワインに見えてくる共通項のようなものを書いていきます。
・高価なものから安価なものまで幅が広い
・エレガントで落ち着いた味のワインが多い ・アルコール度数がやや低め ・品種をブレンドして作られることも多い ・複雑な味わいのものが多い ・土地の料理に合う味わいになっている ・樽の香りをつけすぎない ・ワイン名がわかりにくい |
新世界
かつては、地元で消費するため、もしくは価格の安さで世界市場に進出するために生産されることが多く、そのため品質が低いというのが大多数の認識でした。
それが次第に品質にも力を入れるようなると、急激に質が向上していきました。というのも、新世界の特徴として旧世界よりも温暖でブドウ栽培に適している土地を選んで、ヨーロッパから生産者が渡ってワイン作りを始めたという背景があるからです。さらに、旧世界でのワイン作りのような伝統的技法に縛られることがないために、新技術の導入に積極的でした。これは、ブドウの栽培技術、醸造技術の両面で発展に大きく寄与しました。
そして、ある出来事が新世界ワインの運命を変えます。
1976年フランスのパリで開かれたテイスティング大会で、無名のカリフォルニアワインが名だたるフランス産の銘醸ワインを破ったのです。
それ以降、新世界ワインの「安かろうマズかろう」というイメージは徐々に払拭され、現在の地位を確立しました。
それでは、新世界ワインの大まかな傾向を列挙していきます。
ただし、「新世界」は世界中広い地域に分布しています。よって、すべてがこれに当てはまるわけではありません。おおむねこのような特徴を持っているというくらいに考えていただけますでしょうか。
・比較的安価
・果実味が豊かで、味わいがしっかりしている ・アルコール度数が高め ・単一品種で作られていることが多い ・味わいの特徴がわかりやすい ・樽の香りが目立つものが多い ・ワイン名がわかりやすい |
以上、旧世界と新世界のワインの違いを述べてきましたが、現在では飲むだけで区別をつけるのが難しいほど品質は拮抗しています。
先入観にとらわれず、いろいろと試していただくのがいいのではないでしょうか。
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